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仙洞御所御料椅子に坐し、右手に五鈷杵(ごこしょ)、左手に百八顆(か)の念珠を執る弘法大師のお姿。椅子の下には木履と水瓶、左上辺には即身成仏義の偈文(げもん)が書かれています。弘法大師の画像は信仰の広がりとともに制作が盛んになりました。
しかし遺作の大半は室町時代以降の制作で、鎌倉期に遡る作例はきわめて少なく、他に重要な文化財に指定された優品は旧団家本、高野山竜泉院本、河内長野金剛寺本の僅か三例にすぎません。いずれも真如親王様とよばれる最も流布した形式によるもので、本図もまたこの形をとっています。
制作年代は画風からみておよそ鎌倉時代13世紀後半頃。弘法大師像の典型的な作品であり、前記三例がいずれも保存の点で問題を抱えていることから、本図が弘法大師像の代表的な作品であると言えます。